"春日部の11番"

動物学特論です。予定では、学術的な飼育管理法を書こうと思っていたんですが、特論なんで、もっとこう概論とか各論で出てこないようなどうでもいいことを書こうと思います、はい

 

さて、今日はKK/Taマウスについて(画像は日本クレアHPより)。

 

http://www.clea-japan.com/animalpege/animal/animal06.jpg

 

主な供給元:

日本クレア http://www.clea-japan.com/animalpege/a_1/b_01.html

 

糖尿病を研究している人なんかは、KK-A<y>とか派生した別系統でも”KK”をご存じかもしれませんね。

 

KK/Taマウスは、高脂肪食下で早くから肥満となり、血糖値の上昇、尿糖陽性を示すようになるII型糖尿病のモデルマウスです。雄の方がより深刻な症状を呈し、この点ではKK/Taより派生したKK-A<y>マウスとは異なります。

 

このKKマウスですが、由来は日本です。それが表題の”春日部(K)の11番(K番)”となるわけですね。

 

KKマウスは、名古屋大学農学部家畜育種学講座の近藤恭司らが、春日部で捕まえた野生マウスの中で、IDを「K」と振っていたラインから、多尿でケージがベチャベチャになるものを見つけたことから始まります。

 

 

「これはどうも糖尿っぽいぞ?」と実際に思ったかどうかはさておき、その後、武田薬品工業株式会社に移され、そこで系統樹立して今の糖尿病モデルとしての利用が始まります。

ですので、ラボコード*1武田薬品工業(株)のTaとなってます。また、無駄な知識が増えましたね!

 

その後、西村によって、KK/TaにA<y>アレルが導入され、雌でさらにシビアな症状を呈するKK-A<y>が系統樹立され、こちらも武田薬品工業(株)で薬効評価に用いられることになります。

 

実はこの近藤研はその他にも、ペットショップで売っていたネズミの中から、アレルギー性皮膚炎のモデルマウスであるNC/Ngaマウスを見つけて系統樹立するなど、多くの疾患モデルマウスを発見したマウス遺伝学のメッカの一つなんですね。今は、その面影はないようですがマウスの育種をメインにされていないようですが

 

 

ともあれ、春日部はもっとこう、糖尿研究に貢献した(してる)ってことでアピールしてもいいような気もするんですよね。ゆるキャラで、メタボなおっさんマウスの”けーけーちゃん”とかどうっすか?

 

ちなみに、このKKマウスはミトコンドリアDNAがC57BL/6Jなどとは異なることが示されています*2。ご興味ある方は是非

*1:どの研究機関で維持されているかを示すもので、近交系は「/」の右側、クローズドコロニーは「:」の左側に1~3文字のアルファベットで記します

*2:マウス系統間でmtDNAが異なるのってそれほど多くありません。詳しくは、Goios A et al. "mtDNA phylogeny and evolution of laboratory mouse strains." Genome Res. 2007;17(3):293-8