マウスの話だと思った?・・・残念!コモンマーモセットちゃんでした

道端で『 やぁ、もう来年の配属先決まったかい?』なんてフランクな挨拶いただいたもんですから、空手か少林寺拳法道場を検索してたりします、動物学特論です。

 

今回は、巷で有名なコモンマーモセット(Callithrix jacchus)について書いときたいと思います。夢の超大型グラントでも対象動物になったもんね!

 

コモンマーモセットの有用性は、著名な先生方がいろいろ書かれて、公開されているので、そちらを参照して下さい

 

遺伝子改変コモンマーモセットを用いた神経科学研究の進捗

 

あと、サリドマイドに対する反応がヒトと近かったことや、他の霊長類よりも世代時間が短いなどの点から、発生毒性をはじめとする毒性試験への応用研究も検討されていたりします*1

 

 

 

 コモンマーモセットが日本に入ってきた歴史的なもの

そういう生物学的なところは本職の皆さまのHPをみていただくのが一番として、特論ブログは、「コモンマーモセットが何で日本でいっぱい居るのか?」みたいなところにフォーカスあてて書いていきたいと思います。

 

コモンマーモセットが実験動物として日本で研究され始めたのは意外にも古くて、1975年の文部省特定研究「実験動物の純化と開発」の「小型霊長類の実験動物化」という研究プロジェクトに遡ります*2

 

この「実験動物の純化と開発」ってプロジェクトの主宰は、国立遺伝学研究所の故・吉田俊秀先生ですが、同じグラントで国産マウスの遺伝的背景の均一化やSPF化やウズラの実験動物化などを検討しているので、日本はマウスやウズラ、コモンマーモセットなどがほぼ同時に実験動物として樹立していったという珍しい研究環境だったようです*3

 

ちなみに、このときのコモンマーモセットの元となる”種親”は、イギリスの某巨大薬品企業から購入しています。元々野生でいたところから買ってたわけじゃないんですね。

 

特定研究班の分担として、現在の公益財団法人 実験動物中央研究所が研究に携わったことで、その後、コモンマーモセットの研究はこの研究機関で盛んに行われるようになり、近年では遺伝子組換えコモンマーモセットなどもここで誕生しています*4

 

その後、実験動物中央研究所の販売部門が株式会社化した日本クレアで、現在もコモンマーモセットの販売が行われるようになった・・という経緯なんですね(他の由来のコロニーもあります)。

 

 

 

コモンマーモセットの生殖特性

これらの古くからの検討をもって、現在の容易な繁殖環境の実現などが可能になってるわけですけど、特論=サンとしては生殖生理学が気になるところなので調べてみました。

 

コモンマーモセットの特性と実験利用

コモンマーモセットの特性と実験利用

 

 

 

  • 交尾を始める雄の月齢は11~14カ月齢で、14カ月齢ではほとんどの雄が初交尾を経験していた
  • 雄のテストステロン量が成獣と同等になるのは12.6±1.3ヶ月齢であった
  • 雌のプロジェステロン量についても、ほぼ同様であった
  • 雄雌ともに性成熟は12ヶ月齢付近と考えられる

 

10年以上生きるのに、脱童貞早くね?リア充爆発し(ry

 

一方、雌には少し面白い傾向があることが報告されています

 

  • ペアリングの時期を早くすると、特に未成熟な雌を用いる場合は、妊娠率が低く、初妊娠月齢が遅れる傾向にあった

 

これはちょっと性行動とかの研究したら面白そう。

 

  • 妊娠期間は5~8ヶ月で、なかでも5ヶ月のものが多く、初産~2産後の次の妊娠成立までの時間が長くなる傾向があった
  • 1回の出産で生まれる子は1~5匹で、2匹(12ペア・各12産分, 40.5%)と3匹(48.8%)が多かった。
  • 離乳率は母親に依存し、また初産・2産では離乳率が低い傾向がみられた

 

この部分は一般的には「2匹」と言われているため、初期のコロニーと現在のコロニーでは様子が違うのかもしれません。

 

 

以上、散文的につらつらと書いてきましたが、結論としては、僕もコモンマーモセットの研究やりたいってことなんですよね。

 

動物学特論でした

*1:古くはこことか 

https://kaken.nii.ac.jp/d/p/03680044.ja.html あとは  

http://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/theses/docs/20000206_89y.pdf とか

*2:このグラントの直前にサリドマイドの反応がヒトと似ているとの報告がされています。その後は、科学技術振興調整費などの研究費で研究が継続されていきました

*3:国立遺伝学研究所60年のあゆみってページ面白い 

http://www.nig.ac.jp/museum/anime/genomusi/nig60/index.html 

*4:

Sasaki E et al. "Generation of transgenic non-human primates with germline transmission" Nature 459:523-7, 2009

http://www.ciea.or.jp/division5.html